2016年1月16日

Ⅰ-4 質の高い在宅医療・訪問看護の確保について

(1) 在宅医療では、比較的重症患者から軽症な患者まで幅広い患者に対し診療が行われていることから、患者の状態及び居住場所に応じたきめ細かな評価を実施する。

① 特定施設入居時等医学総合管理料の対象施設を見直すとともに、名称の変更を行う。
② 在宅時医学総合管理料・特定施設入居時等医学総合管理料について、以下のような見直しを行う。
  • ア 月 1 回の訪問診療による管理料の新設
  • イ 重症度が高い患者の評価の拡充
  • ウ 「同一建物居住者の場合」の定義の見直し及び同一建物での診療人数による評価の細分化
③ 在宅患者訪問診療料に係る「同一建物居住者の場合」の評価を見直す。

(2) 小児在宅医療に積極的に取り組んでいる医療機関を評価する観点から、機能強化型在宅療養支援診療所等の実績として、看取り実績だけでなく、重症児に対する医学管理の実績を評価する。

(3) 在宅医療の提供体制を補完するため、外来応需体制を有しない、在宅医療を専門に実施する診療所を評価する。

(4) 在宅医療において、より充実した診療を行っている医療機関を評価する観点から、休日の往診及び十分な看取りの実績を有する医療機関に関する評価の充実を図る。

(5) 在宅自己注射の適正な評価を行うため、以下のような見直しを行う。

  1.  疾患の医学管理に関する評価を踏まえつつ、現行の注射指導回数に応じた評価の差を縮小する。
  2. 2以上の医療機関で異なる疾患に対して、同一の患者に対して当該指導管理を行った場合、それぞれの医療機関において当該指導管理料を算定できることとする。

(6) 在宅呼吸療法の円滑な継続を図るとともに適正な評価を行うため、以下のような見直しを行う。

① 在宅酸素療法指導管理料及び在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料について、医師の判断に基づき患者が受診しない月においても、材料等に相当する費用の算定を可能とする。
② 睡眠時無呼吸症候群又は慢性心不全を合併している患者に対するASV療法について、その有効性を踏まえ、在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料における評価を見直すとともに、在宅療養指導管理材料加算を新設する。

(7) 効果的・効率的で質の高い訪問看護の提供体制を確保するため、以下のような見直しを行う。

① 在宅医療を推進するために、機能の高い訪問看護ステーションの実績要件を実情に即して評価するとともに、重症児の訪問看護に積極的に取り組む訪問看護ステーションを評価する。
② 在宅医療のニーズの増大に対応した訪問看護の提供体制を確保するために、病院・診療所からの訪問看護の評価の充実を行う。
③ 訪問看護を指示した医療機関が、在宅療養において必要かつ十分な量の衛生材料又は保険医療材料を提供したことについて評価する。
④ 医師の指示に基づき、在宅医療において看護師等が医師の診療日以外に行った検体採取、使用した特定保険医療材料及び薬剤に関する診療報酬上の取扱いを明確にする。
⑤ 病院・診療所と訪問看護ステーションの、2か所又は3か所からの訪問看護を組み合わせた利用に関して、複数の訪問看護ステーションの組合せと同様に末期の悪性腫瘍、神経難病等の利用者に限られるよう見直す。
⑥ 医療ニーズが高く複数の訪問看護ステーションからの訪問を受けている利用者に対して、同一日に2か所目の訪問看護ステーションが緊急訪問を実施した場合を評価する。

(8) 歯科における効率的で質の高い在宅医療の提供体制を確保するため、以下のような見直しを行う。

① 在宅を中心としつつ、地域の病院等とも連携して歯科訪問診療を実施している歯科診療所を評価する観点から、在宅かかりつけ歯科診療所加算の施設基準及び名称の見直しを行う。
② 口腔機能が低下し摂食機能障害を有する患者に対する口腔機能の管理について、包括的な評価を行う。
③ 歯科訪問診療料について、歯科訪問診療の実態に即したものとするため、以下のような見直しを行う。
  • ア 同一建物で 1 人に対して歯科訪問診療を行う場合において、患者の全身状態等により診療時間が 20 分未満となる場合の評価を見直す。
  • イ 同居する同一世帯の複数の患者に対して診療をした場合等、同一の患家において2人以上歯科訪問診療を行った場合の評価を見直す。
  • ウ 歯科訪問診療を行う歯科医療機関と「特別の関係」にある施設等に訪問して歯科訪問診療を行った場合の評価を見直す。
④ 同一建物において同一日に複数の患者に対して歯科訪問診療を行った場合等について、歯科訪問診療料の適正化を行う。
⑤ 歯科訪問診療で求められる診療の重要性及び困難性を考慮し、歯科訪問診療で行う処置等について、評価を見直す。
⑥ 歯科の標榜がない病院に入院中又は介護保険施設に入所中の患者に対して、歯科訪問診療を行う歯科医師が栄養サポートチーム等に加わり、その評価に基づいて歯科訪問診療を行った場合を評価する。

(9) 在宅薬剤管理指導業務を推進する観点から、以下のような見直しを行う。

① 医師との連携による薬剤師の在宅業務を推進するため、在宅薬剤管理指導業務において、医師の処方内容に対する疑義照会に伴い処方変更が行われた場合を評価する。
② 在宅患者訪問薬剤管理指導料について、薬剤師 1 人が行う算定制限と、同一世帯に居住している複数の患者に対して在宅患者訪問薬剤管理指導業務を行った場合の評価を見直す。
③ 介護老人福祉施設に入所している患者に対して、施設での適切な服薬管理等を支援するために、当該施設を訪問して保険薬剤師が行う薬学的管理を評価する。

(10) 医療機関の薬剤師が行う在宅患者訪問薬剤管理指導料について、Ⅰ-4(9)②に合わせて見直す。

 

目次

平成28年度診療報酬改定に係るこれまでの議論の整理(現時点の骨子)

Ⅰ 地域包括ケアシステムの推進と医療機能の分化・強化、連携に関する視点

Ⅱ 患者にとって安心・安全で納得できる効果的・効率的で質が高い医療を実現する視点

Ⅲ 重点的な対応が求められる医療分野を充実する視点

Ⅳ 効率化・適正化を通じて制度の持続可能性を高める視点