保険調剤の仕組み

お薬を販売する店舗として、現在では『○○薬局』『○○薬店』『ドラッグストア○○』などがありますが、どんな違いがあるのでしょうか?
1. 薬局と医薬品販売業
「薬事法(薬の「品質」「有効性」「安全性」の確保を主な目的とした法律)」では、薬を販売するところを、次のように分類しています。
(1) 薬局(調剤薬局)
薬剤師が調剤の業務を行う場所。
その薬局が医薬品の販売をする場合は、その場所も含めて薬局といいます。
薬局には厚生労働省令に定められた員数の薬剤師が必要です。
(2) 医薬品販売業
①店舗販売業(ドラッグストアで代表される販売方式)
一般用医薬品を販売することができる医薬品の販売業です。
医薬品を販売する資格者として、第1類医薬品を扱う店舗では薬剤師が、第2類医薬品、第3類医薬品を扱う店舗では薬剤師又は登録販売者が必要です。
②卸売販売業
薬局開設者、医薬品の製造業者、販売業者、病院、診療所又は飼育動物診療施設の開設者その他厚生労働省で定める販売先に対してのみ、医薬品を販売することができる販売業です。
営業所の管理者として薬剤師が必要です。
③配置販売業
今でいう訪問販売です。
厚生労働大臣が定める基準に従い、「店舗専用」以外の一般用医薬品を、配置の方法により販売又は授与することができる医薬品の販売業です。
家庭に医薬品を配置し、使用した医薬品の代金を後日回収する業態です。
2. 保険診療と保険調剤
(1) 保険診療
保険とは、失業、災害、死亡、病気やケガなど事故に備えて、多くの加入者が掛金(保険料)を出し合い、加入者の経済的負担を軽くしようとする方法です。
このような保険の形式によって病気やケガの際の医療費負担を軽減することを目的に、国の制度として定められたのが、「医療保険制度」です。
(2) 保険調剤
保険医が交付した処方せんに基づいて行われる調剤が「保険調剤」です。
保険医療機関で保険診療を受け、投薬があった場合に、その医療機関では薬を出さずに、処方せんを交付する場合があります。
これを院外処方といいます。
(3) 医薬分業
医療機関内では薬を出さずに院外処方によって、薬剤の調剤及び投与を薬剤師が行うという形で役割を分担することを「医薬分業」といいます。
◇医薬分業の利点
・かかりつけ薬局による薬のチェック
患者が複数の医療機関にかかっている場合、薬の飲み合わせなどのチェックができます。
・薬剤師による処方せんのチェック
薬学の専門家である薬剤師によって処方せんがチェックされることにより、医療事故を未然に防ぐことができます。
3. 保険調剤の実務
保険調剤では、処方せんの受付から請求事務まで、おおむね次の手順で行われます。
処方せん受付 | ||
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患者情報の収集 | ⇒ | 俗に言う「アンケート」です。アレルギー、副作用歴などの情報を収集します。 |
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必要事項の確認 | ⇒ | 患者情報をふまえた処方監査、必要に応じて疑義照会します。 ◇処方監査 医師が処方した薬剤が適切かどうか、薬剤師が処方せんを確認 ◇疑義照会 処方内容に不明な点があった場合、処方せんを交付した医師に紹介 |
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後発医薬品の説明 | ||
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調剤設計・調剤決定 | ⇒ | 服薬状況や配合変化を踏まえた調剤設計をします。 ◇配合変化 2 種以上の医薬品を配合した際,薬物相互作用による薬効,副作用または理化学的性状に変化を起こすこと |
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調剤・調剤監査 | ||
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服薬指導・薬剤受渡 | ||
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負担金徴収 | ⇒ | 領収書、明細書、薬剤情報提供書などを患者に渡します。 |
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調剤録・薬歴の作成 | ⇒ | 調剤録、薬歴を作成し保管します。(処方せんも保管します) |
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調剤報酬請求事務 | ⇒ | レセプト作成・提出(月末~月初) |
4. 処方せんの知識
薬局において、保険調剤業務の基礎になるのが「処方せん」です。「処方せん」は、患者を診察した保険医が患者に交付します。「処方せん」の基礎について説明します。
(1) 処方せんの様式と記載事項
保険調剤の処方せんは、次のように様式が決められています。
<<記載される内容>>
患者情報、保険情報、医療機関名、保険医名、処方せん交付日および使用期間、処方内容、備考など
(2) 処方せん受付の留意事項
◇処方せんの使用期間-交付の日を含めて4日以内
処方せんはほとんどの場合、使用期間が空白です。
これは使用期限がないわけではなく、4日以内の場合は記載を省略しても良いことになっています。
◇処方せん等の保存
調剤済の処方せん、調剤録など保険調剤に関する書類は、保存期間が次のように定められています。
・処方せん・・・調剤が完了した日から3年間
・調剤録 ・・・最終の記入の日から3年間
・薬剤服用歴・・最終の記入の日から3年間